冠動脈バイパス術

狭心症・心筋梗塞とは?

心臓の血管が詰まりかかったり(狭心症)、詰まった(心筋梗塞)する状態を指します。一般的には体を動かした際に胸に締め付けられる痛みがあります。

詳しくはカテーテルや冠動脈CTなどの検査で診断が必要です。

治療法は?

a . 冠動脈バイパス術
b . カテーテル治療
c . 薬物療法

患者さんの状態により必要な治療は様々です。東京科学大学では心臓血管外科と循環器内科が一体となった「ハートチーム」で治療方針を検討し、最終的に患者さんの希望もあわせて治療方針を決定します。

冠動脈バイパス術(CABG)とは?

例えば古い国道が狭くて渋滞するようになると、その道を広くする拡張工事(バルーン、ステント治療)を行う事もありますが、新しい迂回路を作るバイパス工事(CABG)が行われることもあります。CABGは後者に該当します。

オフポンプ冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術には人工心肺を使用する場合と、人工心肺を使用しない(オフポンプ: OPCAB)方法があります。オフポンプでバイパスでは心臓を動いたまま縫うため高度な技術が必要とされます。時として時間がかかることもあり、欧米では人工心肺を使用した冠動脈バイパスの方が未だに主流です。

しかし、人工心肺にも欠点があり、使用により脳梗塞を起こすことや、肺、腎臓の機能を悪くする事があります。オフポンプバイパスではこれらの問題が起こることも少なく、患者さんの体にとって優しい手術です。当科では単独の冠動脈バイパス術は殆どがオフポンプで行われています。

低侵襲心臓手術とハイブリッド冠血行再建

近年はカテーテル治療(PCI)の治療成績が向上してきて左前下行枝(LAD)以外のバイパスは冠動脈バイパスと同等の結果が出ていると言われています。一方でLADには依然として内胸動脈(ITA)を使ったバイパス術の方が長期開存など含め良好です。

このため当科では両者の良い所を合わせたハイブリッド冠血行再建:Hybrid Coronary Revascularization(HCR)を循環器内科と協力して積極的に行っております。つまりLADにはバイパス術を行いその他の枝に対してはPCIを行いますが、特にLAD(とその周囲)へのバイパス術は左胸からの小さな傷で手術を行う低侵襲心臓手術 : Minimally Invasive Cardiac Surgery (MICS) ができるため術後の回復が早く早期に社会復帰が出来るという大きなメリットがあります。より低侵襲で手術とカテーテル治療の良い所を合わせた(ハイブリッド)治療法と言えます。

  • MICS CABGの様子

この他にも心筋梗塞合併症と言われる病気があります。a. 急性期では心破裂、乳頭筋断裂、そして心室中隔穿孔などが、b. 慢性期では虚血性心筋症や虚血性僧帽弁閉鎖不全などが手術の対象となります。

よくある質問

カテーテル治療と手術のどっちが良いですか?
お一人毎に状況が異なりますので、どちらとも言えません。例えば心不全や腎不全が合併していたりするとカテーテルや手術だけの問題ではありません。術後の治療も大きな比重を占めます。より多くの治療選択肢(カテーテル、冠動脈バイパス術、ハイブリッド治療、低侵襲治療、心不全治療)を持った当院にご相談ください。
手術後の入院期間はどのくらいですか?
リハビリの進み具合によりますが、早ければ低侵襲手術の場合5日、通常の手術でも7日で退院出来ます。当院は理学療法士を含めた多くのスタッフのサポートのもと早期の社会復帰を推進しています。
糖尿などの合併症がありますが、手術は受けられますか?
当院は循環器内科はもとより、内分泌代謝内科や腎臓内科などあらゆる診療科のエキスパートが集まった総合病院です。合併症をお持ちの方でもいつでもご相談下さい。